ミシシッピ川の近くに、信心深い男が住んでいた。
男は、毎朝毎晩、神に祈りをささげていた。
ある日、ハリケーンがこの地域に迫ってきた。
周囲は大騒ぎになり、人々は避難を始めた。
お隣の家族も避難の準備を始め、男にも、「一緒にうちのトラックに乗って逃げよう」と、声をかけた。
しかし、男は、「神が私を救ってくれる!」と言ってこの申し出を断った。
やがて、雨が激しくなった。
川の水位が上がり、水が周囲にあふれ出した。
男の家も水に浸かり始めた。
そこへ、救援のボートが男の家にやってきた。
ボートに乗っているレスキュー隊は、男に声をかけた。
「そこは危ないので、このボートに乗って逃げてください」
しかし、男は、「神が私を救ってくれる!」と言ってこの申し出を断った。
さらに雨が激しくなり、男はついに、首まで水に浸かった。
救援のために軍隊のヘリコプターがやってきた。
ヘリの隊員はロープを下ろし、「これにつかまってください!」と叫んだ。
しかし、男は、「神が私を救ってくれる!」と言ってこの申し出を断った。
さらに雨は激しくなり、とうとう、荒れ狂った濁流が男をのみ込んだ。
気がつくと、男は天国にいた。
男は、天国で神様を見るなり、文句を言った。
「私はあなたを信じ、毎日祈りを捧げ、ハリケーンが来た時もあなたの救いを待っていたのですよ!」
神様は、困惑しながら答えた。
「わしは、お前を救うため、トラックと、ボートと、軍のヘリまで、送り込んだんだが」