一人の男が、天寿をまっとうし、天に召された。
まだ新入りの彼は、天使に先導され、天国を案内されて見て回った。
しばらく行くと、大きな壁があり、針の付いた丸い時計のようなものが無数に掛かっていた。
それはとても不思議な光景だった。
男は好奇心を抑えられず、天使に質問した。
男:「ここの壁にたくさん並んでいる、時計のようなものは何ですか?」
天使:「ああ、この時計状のものは人のウソを数えるためのものです。地上の人には見えませんが、それぞれ生きている人間一人ひとりにヒモづいています。そして、その人がウソをつく度、針がカチッと進むようになっているんです。われわれは、その人が死んだとき、天国に行くべきか、地獄に行くべきか、これを見て参考にするんです」
男:「へえ。そんな風にして一人ひとりのつくウソの数が数えられているんですか」
天使:「そうです。例えば、今、ちょうど針が動いたこちらにあるカウンターは、サウスカロライナの自動車のセールスマンのものです。彼がクルマを売ると、よく針が進むんです」
男:「なるほど」
天使:「また、こちらのクモの巣のかかった時計は、アイダホの農村の老婆のものです。善良で孤独な彼女は、ここ数年間ウソをついていません」
男:「へー。ところで、あそこに、ひとつだけ、前に人だかりができている時計がありますが、あれはいったい誰のものですか?」
天使:「ああ、あれは、ドナルド・トランプのものです。毎日、もの凄い勢いで回り続けているので、みんな扇風機の代わりに涼みに来ているんです」