悪魔が、弁護士の男の耳元でささやいた。
「おまえの収入を10倍にしてやろう。毎年、丸4か月の休みもやろう。さらに、全てのクライアントがお前を尊敬し、辣腕(らつわん)弁護士として世間に名がとどろき、その上、100歳まで元気に生きられるようにしてやろう」
そして、悪魔は、冷たい笑みを浮かべた。
「ただし、そのためには条件がある。お前の妻の魂を、地獄に持ち帰らせてもらう。どうだ?」
弁護士は、黙って考え込んでいた。
悪魔は、たたみかけた。
「どうかな?難しい決断だと思うが」
弁護士は、重い口を開いた。
「いや。あまりにも出来すぎた話なので、なにか裏があるんじゃないかと思って」