2人の男がバーに入ってきた。
一人は、高級スーツを着た、きちんとした身なりの紳士だった。
もう一人の方は、Tシャツ姿で、髪を赤く染め、耳と唇にピアスを付けた、いかにもチャラそうな男だった。
Tシャツ姿の男は、笑みを浮かべながら、カウンターに近づいた。
彼は、空のグラスをひとつもらってカウンターの上に置き、陽気にバーテンダーに話しかけた。
「ヘイ、マスター。賭けをしないかい?オレが、この店の入り口からおしっこを飛ばして、カウンターの上のこのグラスの中に全部入れられたら、100ドルくれ。もし、一滴でも外したら、100ドルあげるからさ」
バーテンダーは、「イカれたやつだ」と、つぶやきながら、応じた。
「おいおい、そんなこと、できるわけないだろう。よし、わかった。あなたがそんなに言うなら、100ドル賭けよう」
Tシャツ姿の男は、うなずくと、バーの入り口に立ち、ズボンのチャックを下した。
そして、カウンターの上のグラスをめがけて、勢いよくおしっこを始めた。
しかし、おしっこは、壁や床や椅子やテーブルにまき散らされ、グラスには一滴も入らなかった。
バーテンダーは、それ見たことかと、勝ち誇った笑みを浮かべながら、Tシャツ姿の男から、100ドルを受け取った。
Tシャツ姿の男も、バーテンダーに100ドル払い、満足そうに微笑んだ。
バーテンダーは、Tシャツ姿の男の表情を見て、不思議に思い、たずねた。
「あんたは、できもしない無謀な賭けをして、負けて、100ドル払ったくせに、いったい何がうれしいんだい?」
Tシャツ姿の男は、答えた。
「あそこの高級スーツを着た紳士と、1000ドル賭けたのさ。オレがこの店の中でおしっこをまきちらしても、バーテンダーは、怒るどころか、笑みを浮かべてくれるって」。