ある大企業のCEOが辞任を表明し、新しいCEOが任命された。
前任のCEOは、数日かけて新CEOに業務の引き継ぎを行った。
ひと通りの引継ぎを終え、いよいよ会社を去る直前に、前任者は個室で後任の新CEOに封筒を3通渡した。
「いいかい、この3つの封筒は机の引き出しの奥に大切にしまっておくといい。そして、もし、どうしても解決が難しい問題に直面したときに、これを一通ずつ開けるんだ」
新任のCEOはその3通の封筒を受け取り、言われた通り机の奥にしまった。
彼が就任する前に停滞気味だった会社の業績は、しばらくして回復した。
しかし、半年ほど過ぎて、売り上げが伸びなくなり、利益も減り始めた。
苦境に陥った新CEOは、ふと、前任者が残してくれた封筒のことを思い出した。
彼は、そっと机の引き出しをあけ、一通目の封筒を取り出した。
封筒には、一枚の紙が入っていて、次のように書かれていた。
「前任者のせいにしろ」
男は、記者会見を開いた。
そして、今の会社の業績の伸び悩みは、前任のCEOに責任があった、と説明した。
彼の説明に満足した株式市場関係者は、新任のCEOに好意的な反応を示した。
会社の労働組合もこの会見に満足し、会社の立て直しに協力を表明した。
しばらくして、会社の業績は再び回復し、株価も上がった。
しかし、半年ほど過ぎると、また、売り上げが停滞しだした。
製品の不具合まで露呈した。
彼は個室で悩み、机の引き出しから、2通目の封筒を取り出した。
そこには、一枚の紙が入っていて、次のように書かれていた。
「組織を変えろ」
彼は立ち上がり、大規模な組織改革に着手した。
会社の業績は、再び、上昇軌道に乗った。
今度は数年間、順調だった。
しかし、また、会社の業績が行き詰まり始めた。
彼は社長室で頭を抱えた。
そして、机の引き出しから、祈るような気持ちで、3通目の封筒を取り出した。
そこには、一枚の紙が入っていて、次のように書かれていた。
「封筒を3通、用意しろ」